2013年3月15日金曜日

オマージュとガジェット満載、メタミステリー的幻想大作 - 山田正紀「ミステリ・オペラ」

 朝の最低マイナス0.6度とやや低め、穏やかに晴れた日中は最高13.7度とやや高め、気が付けば構内の桜のうち早咲きのものが咲き始めてます!

 本日は最近読んだ本から、文庫上下巻で1200頁近い大作、旧仮名遣いもあり、しかもこのところ東京への車中は花粉症で朦朧として読書する気力が湧かないこと多く、読了するのに結構時間が掛かりました。

ミステリ・オペラ 山田正紀
 戦時の大陸と昭和末の東京、50年隔たった2つの舞台で起きる色々な事件が、多層的な作中作を絡め奔放な順序で語られます。次々と起ち上がる無数の死者、忽然と消失する列車、空中を浮遊する飛び降り自殺者、などの幻想的な謎に加え、数々の密室、クイーン的なダイイングメッセージ、見立て殺人、などなど過剰なまでに「探偵小説的な」装飾を配し、南京大虐殺、歌劇「魔笛」、量子論のMany-worlds interpretation等々を背景とする壮大絵巻にして、昭和の3大奇書「黒死館殺人事件」「ドグラ・マグラ」「虚無への供物」へのオマージュも怠り無し、謎解きは拍子抜けのものやプレゼン的に勿体無いものが多いんですが、それが途中でどうでもよくなってくるメタ的味わいに幻惑されました。

 自分だけかもしれませんが、建物など舞台に関する描写が余りピンとこず、見取り図や口絵があればもっと謎を楽しめるのに、と感じました。

 (本作でも語られている)大戦による「大量死」と探偵小説との関連を常に論じている笠井潔が巻末解説(文庫版)に配されているのはけだし必然、あと文庫版カバーを2つ合わせると事件の全貌が浮かび上がるのもお洒落です。

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